概要
タカラトミー、バンダイナムコホールディングス、サンリオを筆頭に玩具の売り上げを伸ばしている。
国内では2023年度に市場規模1兆円を突破。
少子高齢化の影響もありながら、以下の顧客を軸に市場成長を続けている。
- 子供向け
- キダルト向け
- インバウンド向け
トレンドは「大人も買いたくなる商品」
業界構造
玩具を作りたい「メーカー」が「製造会社」から原材料を仕入れ商品を作成し、「小売店」に販売する。そして「小売店」が消費者に販売することで成り立っている。近年は、メーカーと小売りの中間流通を担う企業も存在する。
玩具の製造の中でも主に「技術開発や設計」を担っている会社。
メーカーからの依頼を受け、メーカーが作った企画書を基に材料を提供することや、製造会社が自ら企画・設計し、玩具を作る場合もある。
(例)タカラトミーアーツ、バンダイナムコクラフト
「おもちゃ分野」と「ゲーム分野」に分けられるのが特徴で、玩具の「企画開発やデザイン」などを手掛ける企業。
(例)バンダイナムコHD、タカラトミー、サンリオ
メーカーと販売店をつなぐ企業で、玩具の流通を管理する役割を担っている。
(例)ハピネット
メーカー(中間流通企業)から仕入れた玩具を消費者に販売する役割を担っている。
小売店のバイヤーは各メーカーの担当者と商談を行い、どのような玩具をどれほど仕入れるかなどを決定する。
(例)トイザらス、キデイランド、ビックカメラ
市場成長率の推移
日本玩具協会が発表した年度別の玩具市場規模調査結果データをもとに、2018年~2023年の間の分類別売り上げを表にまとめた。

2020年以降から市場の成長に貢献している分類として、以下があげられる。
分類 | 主な商品 | 成長要因 | ヒット商品 |
---|---|---|---|
カードゲーム、 トレーディングカード | トレーディングカード | 玩具からコレクション商品の側面が強くなり、投資対象として需要が上がったため。人気Youtuberがレアカードを引くまでの開封動画や、高額で取引されているトレカを購入する動画を配信することでトレカ市場の盛り上がりが全年齢の視聴者に伝わった。 ゲームそのものも面白いので、大人も再熱する市場となった。 | ポケモンカードゲーム ONE PIECEカードゲーム 遊戯王OCG |
ハイテク系トレンドトイ | インタラクティブトイ ロボット パソコン関連 | プログラミング義務教育化の影響と、AI産業の発達により需要が拡大したため。市場全体の売り上げ率としては低いが、2023年度最も成長率の高い分類。今後も教育市場と関連して玩具⇒教育ツールとしての価値転換を高めていきそうな市場。 | Tamagotchi Uni Original Tamagotchi ぷにるんず |
ぬいぐるみ | キャラクターぬいぐるみ ノンキャラクターぬいぐるみ | キダルト層やインバウンド需要の取り込みに成功したため。 国内でも「ぬい活」といった言葉の流行や、キャラクターぬいぐるみがインバウンド客のお土産になることが追い風に。 | ポケモン スーパーマリオ ピクミン スタジオジブリ |
ホビー | プラモデル、ホビーR/C 鉄道模型、フィギュア | キダルト層向けのガンプラや、インバウンド客のお土産としてフィギアが選ばれることが多く、売り上げが成長した。 | ガンプラ フィギア |
大手メーカー企業の比較
タカラトミー | バンダイナムコ | サンリオ | |
---|---|---|---|
最上位概念 | アソビに懸ける品質は、世界を健やかに、にぎやかにできる。 | Fun for All into the Future | みんななかよく |
中期ビジョン | 高い品質とクリエイティブ性を持ち、世界中で愛される総合アソビメーカーに成長する。 | Connect with Fans | One World, Connecting Smiles. |
主力IP | ・トミカ ・プラレール ・リカちゃん ・デュエル・マスターズ ・ベイブレード | ・ガンダム ・たまごっち ・プリキュアシリーズ ・ワンピース ・ドラゴンボール ※他主力IP多数 | ・ハローキティ ・シナモロール ・マイメロディ ※他主力IP多数 |
玩具事業の主力商品(2023年度) | ・第4世代 BEYBLADE X ・人生ゲーム ・ドリームトミカ ジブリがいっぱい ・「フォトジェニックリカ」シリーズ | ・ガンダムシリーズのプラモデル ・コレクターズフィギュア等のハイターゲット(大人)層向けの商品 ・「ONE PIECE」のトレーディングカードゲーム等のカード商材、カプセルトイ、菓子・食品等 | ・ミニマスコットホルダー ・前髪クリップ ・シークレットアクリルスタンド ・サンリオコレクターズカードプラス(つながる) ・トレーディングカード用ホルダー |
玩具事業の売上高 | 2,083億円 | 4,912億円 | 不明 |
玩具事業の営業利益 | 188億円 | 786億円 | 60億円以上 ※明確なデータはないが、統合レポートより抜粋 |
玩具以外の事業 | ー ※ 2007年にアミューズメント事業玩具事業へ統合 2010年に玩具周辺事業を玩具事業へ統合 | ・デジタル事業 ⇒ネットワークコンテンツの企画・開発・配信、 家庭用ゲームなどの企画・開発・販売 ・IPプロデュース事業 ⇒アニメーションなどの映像・音楽コンテンツの 企画・製作・運用、著作権・版権の管理・運用、 アーティストの発掘・育成、ライブエンターテイン メント事業 ・アミューズメント事業 ⇒アミューズメント機器の企画・開発・生産・販売・ アフターサービス、テーマパークやインドアプレ イグラウンドを含むアミューズメント施設の 企画・運営など | ・ライセンス事業 キャラクターを企業に利用してもらい、ライセンス料をもらっている ・テーマパーク事業 サンリオピューロランド(東京都多摩市)とハーモニーランド(大分県)の運営 ・新規事業 エデュテイメントでは 幼 児 向け 英 語 教 材「Sanrio English Master」を扱っており、デジタル事業では人気アーティストやキャラクターなどが出演するバーチャルイベント「SANRIO Virtual Festival」を開催 |
グループ(関連会社)構成 | 株式会社タカラトミー、子会社28社により構成 | 株式会社バンダイナムコHD、子会社102社及び関連会社13社により構成 | 株式会社サンリオ、子会社23社により構成 |

大手3社の主力商品を比較すると、1つあたりの単価の差が歴然。
バンダイナムコの強みはメディアミックスできる事業基盤にあるが、商品の側面から見てもプラモデルやコレクターズ向けフィギアなど、通年販売が見込める高単価商品を多数保持していることも強みな気がする。
タカラトミーも主力商品以外にもELトイに分類される2万円前後の玩具は販売している。しかし、子供向けであるためクリスマス需要に依存している状態。
この違いが利益率の違いにも起因しているのではないだろうか。
売り上げの市場シェア率
玩具業界の中で大手メーカーの売上高から市場シェア率をグラフで比較すると以下のようになる
- バンダイナムコは利益率16%を誇っており、市場シェアでも半数を占めている
- タカラトミーは利益率9%で、約20%の市場シェア率を保有している
- サンリオは約7%の市場シェア率と推定
※物販事業の売上高が不明なため、営業利益から9%の利益率と仮定して値を算出





バンダイナムコの事業の堅調さと圧倒的な市場シェア率がすごい
各指標の比較
メーカー(製造業)で様々な玩具の企画・製造を行うため業種を「その他製品」とする。
業種の平均も含め、主要な4つの指標を比較すると以下のようになる。
どの企業も業界平均を大きく下回ることはないが、その中でもサンリオの圧倒的な指標の良さが目立つ。
バンダイナムコとタカラトミーは売り上げに差はあれど、PER・PBRが大きく離れていないのが驚き。
バンダイナムコの成長率に対してこのPERはまだまだ割安感を感じる。








企業 | PER | PBR | ROE | ROA | 配当利回り | 自己資本率 | 株価 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
業界平均 | 15.1 | 1.3 | 11.4 | 7.7 | 67.47 | ||
バンダイナムコH | 26.2 | 4.06 | 15.02 | 10.69 | 1.39 | 72 | 5,117 |
タカラトミー | 22.9 | 3.04 | 10.49 | 6.02 | 1.52 | 60.1 | 3,695 |
サンリオ | 38.1 | 17.2 | 29.16 | 13.7 | 0.8 | 41.4 | 6,532 |
業界の課題
大手玩具メーカー3社による統合報告書を見ると、以下のようなことが玩具業界全体の課題としてあげられる。
国内市場の縮小に対して、ターゲット層の拡大(大人向け商品の強化)、商品カテゴリーの多角化、海外展開の加速が共通の対応策となっている。特に玩具業界では、子どもをメインターゲットとしてきた歴史があるためこの課題の影響は極めて大きいものと推測される。
スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスの普及により子どもの遊び方が大きく変化している中で、従来の物理的玩具の価値をいかに維持・向上させるかが重要な課題となっている。今後はデジタルの技術を活用し、玩具以外の価値をいかに付与できるかが新たな市場開拓の鍵になる。
プラスチックなどの原材料価格の上昇、人件費の高騰、物流コストの増加、海外生産拠点の地政学的リスクなど、製造・流通面での課題が顕在化している。これらのコスト上昇を製品価格に転嫁できるかどうかも重要な課題となっており、各社は生産体制の最適化や調達先の多様化などの対策を進めている。
環境問題への対応は玩具業界全体の重要課題となっている。そのために、各社ではガンプラのランナー回収やカプセルトイのカプセル回収、環境に配慮した商品開発の推進を進めている。海外シェアを伸ばすためにもサステナブル素材への転換や製品のリサイクル・リユースの仕組み構築が急務。
大型玩具専門店の減少や消費者の購買行動の変化に対応するため、自社ECサイトの強化、SNSを活用した直接的なコミュニケーション、オンラインとオフラインを融合した販売戦略(オムニチャネル)の構築が課題となっている。
特にデジタルネイティブ世代の親や子どもたちへのアプローチ方法の変革が求められる。