信用取引のしくみ

目次

信用取引とは

信用取引とは、証券会社に現金や株式を担保として預け、それによって証券会社から資金を借りて株式を買ったり、株式を借りて売ったりする取引のこと。

信用取引では預ける担保のことを「委託保証金」という。最低額は30万円以上と定められており、委託保証金の約3.3倍までの取引が可能のため、株価が高くなかなか手を伸ばせない銘柄を取引しやすくなるメリットがある。

また、現物取引では不可能な「売りからの取引」を行えるのも大きな特徴。上昇相場だけではなく、下落相場でも収益チャンスが増える。

ただし、信用取引は現物取引とは異なり取引期間に期限がある。

買付した株式をずっと保有することはできず、定められた期間内に証券会社に返済する必要がある。

信用取引にもいくつかの種類があり、種類に応じて返済期限も異なる。

  • 制度信用取引:6か月
  • 一般信用取引:証券会社によっては無期限
株式を担保にするってどういうこと?

現金を担保にするのはイメージできるけど、「株式を担保にする」ってどういうこと?

「株式を担保にする」というのは、 自分がすでに持っている株を証券会社に預けることで、その価値に応じた信用取引の枠をもらう ということ。

例えば、すでに100万円分の株を持っているとしたら…

この株を 証券会社に担保として預ける ことで、証券会社はその株を担保にお金を貸してくれたり、売るための株を貸してくれたりする。

信用取引の種類

制度信用取引

取引可能な対象銘柄や逆日歩(品貸料)の金額などの取引条件を証券取引所や日本証券金融が決めている信用取引。制度信用取引では、取引所によって認められた銘柄しか取引できない。

一般信用取引

取引できる銘柄や返済期限、逆日歩の金額などの取引条件を証券会社が決定する。6か月以上保有したい場合や、逆日歩の発生リスクを回避したい場合に使うとメリットがある。

一般信用取引では長期間用の他にデイトレード向けの信用取引を用意している証券会社もある。

それぞれの特徴を比較

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項目制度信用取引一般信用取引
銘柄の選定証券取引所証券会社
メリット取引所が指定する銘柄で取引ができる
返済期限が最長6か月なので、損を確定できず長期で塩漬けにすることがない
制度信用取引では取引できない銘柄も取引できる場合がある
デメリット逆日歩が発生する可能性があるため、新規売建て(空売り)する際に注意が必要証券会社に株式の在庫がなくなると空売りができなくなる
返済期限最長6か月無期限の証券会社もある
逆日歩発生する場合がある発生しない

逆日歩(ぎゃくひぶ)とは
信用取引の売り手が買い手に支払うコストのこと。

以下のような事態になると、逆日歩が発生する。

  • 信用取引で売建(空売り)が信用買いを上回ると、証券会社が保有している株式が不足する
  • 証券会社は、証券金融会社から不足分を調達する
  • 証券金融会社は、機関投資家などから株式を調達する際に、入札で決定した手数料を徴収する

この手数料を逆日歩として、空売りしたい人が支払う。

一般信用取引では、逆日歩が発生しないかわりに、証券会社に株式の在庫がなくなると空売りができないんだね!

取引手法の種類

取引手法には以下の2種類がある。

  • 「お金を借りて株式を買付する」信用買い
  • 「株券を借りて株式を売却する」信用売り

どちらも「6ヵ月後には反対売買して差額を精算する」信用決済または「現金や株券を用意して精算する」現引き・現渡しの選択になる。

信用買い

現金や株式を担保に、証券会社から資金を借りて株式を買うこと。

「買建(かいだて)」と呼ばれ、信用買いで保有した株式は「買建玉」と呼ばれる。証券会社から借りた資金は、最終的に期限内に買い付けした株式を売却(決済)することで返済する。

信用売り

現金や株式等を担保に、証券会社等から株式を借りて売ること。

「売建(うりだて)」と呼ばれ、売った株式は「売建玉」と呼ばれる。一般的に「空売り」と呼ばれる取引は、この信用売りのことを指す。

現物取引だと、手元に保有していない株式は売ることはできない。一方で、信用売りは証券会社等から株式を借りて売り、期日までに買い戻す取引なので、それが可能になる。

売った時の価格と買い戻した時の価格の差額が利益になるため、株価が下がると予想した場合は、信用売りを利用することで利益を得られる可能性が生まれる。

高く売った後に、安く買い戻すことでなぜ利益がでるのか

株はわかりにくいので、リンゴを使って説明すると、以下のような仕組みで儲かる。

  • 友達(証券会社)からリンゴ(株)を1個100円で借りる
  • すぐに市場で100円で売る(現金100円ゲット)
  • しばらくして、市場のリンゴの値段が50円に下がる
  • そのリンゴを50円で買い戻し、友達に返す
  • 最初に売っていた時に100円もらっていたので、50円の利益

メリット

レバレッジ効果

信用取引では、証券会社からお金を借りて株を購入できるため、自己資金の何倍もの取引が可能。例えば、10万円の自己資金で30万円分の株を購入できるなど、少ない資金で大きな取引をすることができる。

株価の上昇・下落どちらにも対応可能

信用取引では、株を購入する「買建」と株を売る「売建(空売り)」の両方ができる。
そのため、株価が上がる場合も下がる場合も利益を狙うことができる。

同日に同一銘柄を何度でも取引できる

現物取引では、1日に一つの銘柄を同じ資金で何度も取引を行うことが禁止されている。
しかし、信用取引ならそれが可能。
なので資金効率を高めて取引することができる。

デメリット

リスクが大きい(損失が自己資金を超える可能性がある)

信用取引には返済期限があるので、そこまでに損失が膨らむとレバレッジのかかった損失を負うことになる。

追加証拠金(追証)が発生する可能性がある

委託保証金と委託保証金維持率

追加証拠金が発生するメカニズムを理解するにあたり、理解しておく用語が2つある。

  • 委託保証金
    信用取引を行う際に証券会社に担保として差し出す現金や株式のこと
  • 委託保証金維持率
    その時点での建玉約定代金に対する委託保証金の割合を示すもの
    $$ 委託保証金維持率 = \frac{委託保証金}{建玉}\times100 $$

ポイントは委託保証金維持率を計算する際に建玉の評価損が委託保証金から差し引かれるという点

証券会社によって異なるが、一般的には委託保証金維持率が30%以上でないと、新規で注文を出せなくなる。また、20%を下回ると委託保証金維持率を上げるために追加保証金が発生する。

期限内に追証分を解消できない場合は強制決済が発動し、保有している建玉が全て決済される。

追証が発生する例

例えば、委託保証金150万円、約定代金450万円で買建した直後の委託保証金率は33.3%。

$$ 33.3 = \frac{ 150万円 }{ 450万円 }\times100 $$

このあと株価が暴落し、45万円の評価(含み)損が発生した場合は…
$$ 23.3 = \frac{150万円 – 45万円}{450万円}\times100 $$

追証ラインを25%にしているところだと、この時点で追証が発生する。

追証が発生してしまったら

証券会社にもよるが、一例として日光イージートレード信用取引では、委託保証金維持率が25%未満になった場合、委託保証金維持率が30%に回復するまで、不足する委託保証金を差し入れるか、評価損を抱えた建玉を返済するルールとなっている。

追証の目的

追証は嫌なイメージもあるが、相場が急変した際などに損失が拡大しすぎるのを防止するためのルール。しかし、金融ショックをはじめとする相場の急変動が起きると、強制決済をしてもストップ高やストップ安で約定できず、損失が拡大してしまう可能性もある。

取引をするためのコストが発生する

現物取引にはない「金利」や「貸株料」などのコストが発生する。
以下は発生するコストの一覧。

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種類内容
取引手数料信用買いと信用売りの両方で発生するコスト
金利信用買いに対して発生するコスト
貸株料信用売りに対して発生するコスト
逆日歩制度信用の売りに対して発生するコスト
市場で信用売り残高が信用買い残高を上回った銘柄で発生
事前に予測するのが難しく、日証金の発表は取引終了後
管理費1ヶ月経過するごとに発生するコスト
名義書換料信用買いに対して発生するコスト
権利確定日をまたいで保有している場合に発生
配当金相当額信用売りに対して発生するコスト
信用取引では配当金が発生した場合、売りで保有している人から配当分を徴収し、買いで保有している人に支払われる

以下は三菱UFG eスマート証券で掲載されている取引手数料の抜粋

現物取引との比較

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項目現物取引信用取引
空売り買いのみ買い売り両方
取引可能金額資金の範囲内担保金の約3.3倍
取引コスト売買手数料売買手数料の他
金利・貸株等の諸経費
日計り取引同日に同一銘柄の同一資金による取引は1往復まで銘柄に関わらず制限なし
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